PGA REPORT 104
PGA REPORT104 2011/4 No.104

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INTERVIEW
2010 PGAティーチングアワード最優秀賞
桑田 泉プロ
クォーター理論が
ゴルフを変える!

 

日本ゴルフのレベルアップに重要な位置を占めるティーチング。
PGA理論の確立と時代に即応した実践を探る「PGAティーチングプロアワード」は、昨年末、最優秀賞に桑田泉プロ(41)を選んだ。
同賞がスタートして3年、初の最優秀賞受賞者となった桑田プロのティーチングの現場を紹介し、理論や実践、今後の展開を語ってもらった。

☆   ☆   ☆
──最優秀賞おめでとうございます。受賞した感想はいかがですか。
桑田 アイデアや新たなレッスン理論、ティーチングシステムなどからナンバーワンを選ぶPGA恒例のアワードでは10人が最終選考会で発表、最優秀に選ばれ光栄です。3年目にして初の最優秀賞だそうで、大変誇りに思っています。
 野球少年で甲子園にも行きましたが、プロゴルファーとなりティーチングに生きがいを見つけました。プロになる途上ではイップスで苦しむなど、アマチュアゴルファーの苦労、挫折も理解でき、アメリカにも3年間出かけ、自分なりにいろいろ研究し勉強を積んだ成果と受け取っています。受賞後はジャパンゴルフフェアでのイベントなど、PGAの顔として各方面の方々と接し励みとなり充実感があります。

──レッスンにおける基本的な姿勢、取り組みについてどうお考えですか。ゴルフは楽しむ心が必要ですが、反面、上達に時間がかかり、わかったと思ってもまた闇の中に入る複雑なスポーツ。ティーチングに携わる人はそうしたことに対応することが求められますが、どう考えますか。
桑田 基本的にはアメリカにあり日本にないものを見つけることで基本姿勢が定まりました。芝生で練習できるアメリカとできない日本。この溝を埋めないと日本人はいつまでたってもゴルフはうまくならないと。
 日本の今の環境は、練習はドライバーだけ。練習レンジしかないからみんなゴルフとはドライバーであると思っている。ワンラウンドのショットごとの割り合いは、40パーセントがパット、20パーセントがアプローチ、ドライバーショットはわずかに15パーセントです。この比率ははっきりとグリーン上とグリーン周りの大切さを表しています。この点を基本に環境作りしていこうと立ち上げました。

──アメリカではコースで十分練習できるからパットから始めアプローチをしっかりやる。しかし、日本人はドライバーに比重を置き、アプローチ、パターをじっくりやるのはアスリートゴルファーかプロくらいですね。
桑田 2007年に今の場所の倉庫を借りて300坪(約990u)の室内練習場を作りました。70打席の練習場よりパット、アプローチが練習できる施設が必要だと思いました。ショートゲームを思う存分練習させてスコアアップにつなげたい、そのためには環境作りだと。
 日本人ゴルファーを変えたかったのです。パット、アプローチの小さな動きの中には本当のインパクトがあり、アプローチにはゴルフに必要なすべてがある。この動きをわかるとアイアンでのフック、スライスは簡単に打てるしドライバーなど大きなショットのときに必要な技術も自然とやさしく覚えられます。

──アワードのテーマは「結果の出るイメージと順序」でした。どういう内容ですか。
桑田 ボールをコントロールするのはクラブで、クラブを動かすのは体、体を動かすのは脳。だから脳に何をイメージさせるかが重要だ、と。ゴルフはメンタルスポーツであるからイメージ、つまり想像して創造するんだ、という考えです。
 イメージならいつでもどこでもできるので、練習は週一のレッスン、月一のラウンドでも十分です。私もこのことをわかってから、練習しなくてもちゃんと打てています。生徒さんは私はプロだから、練習しているからできるんだ、と信用しませんが、順序立てが身についていれば、イメージ力で対応できるということの実践です。

──どこからそういうアイデアが生まれたのですか。
桑田 私もゴルフでは痛い目に逢っています。トーナメントプロを目指していたのに、5年間もイップスになったこともあります。自分のことが分からず苦しんだのは順序立てた理論が自分になかったせいです。そこで自分なりのゴルフシステムというのを作りました。私のスクールのプログラムで説明しましょう。
 “36カードスクール”と名付けましたが、ショートパットからアプローチまで12ポイントが基礎レベル。さらにアイアンや傾斜地からのショットを覚える必須レベルが12ポイント、その上にコントロールやボディターン、バンカーの目玉などの上級レベルが12ポイント合計36項目です。
 これを週一回、順序良く覚えて1年間やる。基本的にはこれがビギナー、中級クラスのプログラム。上達が止まったり、頭打ちの人はすべてショートパットからきちっとプログラムをこなしてもらいます。基本ばかりで大変だ、と思うでしょうが、ゴルフはいま覚えたことが明日には忘れる。新しいことを教えられると直前のことも忘れるものです。
 しかし、カードシステムにしておくと忘れたら1に戻ればショートパットの悩みを解消できますし、ロブが打ちたければ必須レベルの何枚目というように戻ることができます。これがカードスクールの利点です。日本のゴルフレッスンに足りなかった部分が埋まったと思います。さらに上級者はこのシステムを逆にたどって基本に戻ることもできます。レッスンは定員40分レッスンと20分の練習で1回7千500円から。ほかに初めて来る方のために45分でクォーター理論をダイジェストで体験できるプレミアレッスンもあります。
 レッスンフィが高いと思うかもしれませんが、ゴルフに対する個人の価値観で評価は異なってきます。環境が整えばゴルファーはハッピーであると、私がそう思ってやってきたので理解していただいています。生徒さんの中には毎週2時間かけて通っていらっしゃる人やプロゴルファーの方もいらっしゃいます。

──桑田流クォーター理論について教えてください。
桑田 クォーターとは英語の4分の1。クォーターと私の名前、クワタの語呂が合うのでそう名付けました。イメージでスイングは決まると前述しましたが、多くのゴルファーはボディターンという言葉に毒されている、連続写真でプロのスイングを見て真似しているから正しい動きができずに苦しんでいる。
 フォローでボールを打てと言う人もいますが、地面のボールをクラブが浮いたフォローでは打てません。ボールはクラブが打つ。バックスイングからトップ、そしてインパクトまでの右半分でボールを打ち、ボディターンはそのあとについてくるものです。かつての名手、戸田藤一郎プロ、青木功プロが実証していますし、今のトッププロもやっていることです。


──そのことはどこで確信したのですか。
桑田 球技はすべてボールに対してどう当てるかですが、ゴルフはトップからボールまでの右側4分の1でよい。野球は投げたボールを引きつけて打つ。スピードや変化に一瞬で判断しどこに来るかも瞬間の判断、予測の上で打つ。
 しかし、ゴルフは止まっているボールを打つ。当てるには野球のように向かっていってはダメです。インパクトが詰まってしまう。そのかわりゴルフはフックなら内側、スライスなら少し上からクラブを入れれば打てる。サッカーのキックも足の入れ方でコントロールしますよね。このように他のスポーツと比べることでゴルフ独自のものを探ったのです。
 ゴルフのボールコントロールはトップからインパクトまでの4分の1のクラブの動かし方です。ポイントは左の前腕のひねりを使います。球を上げたり止めたり、ロブを打ったりスピンを変えたり、前腕が重要な役目を負いながら右半分でボールをさばいていきます。

──前腕の動きですか。
桑田 アームローテーションのことです。日本流にいえば手打ちです。手打ちというと今のボディターン派からは総スカンを食うでしょうが、私の生徒さんは手打ちでアームローテーションを覚え、その結果、ボディターンもできてくることを体感しています。
 手打ちは別の言い方をすれば、クラブヘッド打ち、と言い換えてもいいでしょう。ボディターンをしようとするからインパクトが詰まる。手打ちでインパクトしたら、その後にボディをターンすればいいのです。

──素晴らしい施設ですが、日本で初のゴルフスタジアムでしょうね。経営者としてご自身が紹介してください。
桑田 トーナメント仕様の室内練習場を作りました。アメリカでの修行時代、いい環境を見ていましたし、トーナメントも出てプレッシャーでイップスになったこともあり、環境はできる限り芝に近づけたいと思い、200の倉庫の内から今の場所を選びました。総面積は500坪(約1650u)で、クラブハウス、ビデオルーム、応接室と駐車場を除いた、全面人工芝のエリアは300坪(約990u)です。
 グリーンは超高速に仕上げており、順目で13フィート、逆目で10フィートのスピードです。更にグリーンの手前に深いラフをつけ、これが売りですが、30ヤードのアプローチを野球のキャッチボール感覚でいつでもできるようにしてあります。
 屋内には柱がなく壁際に灰色のネットを張り巡らしドライバーも打てます。天井はいくら高いロブショットを打っても届かない高さです。バンカーは砂の管理が難しいため作れなかったのですが、工夫して練習しています。
 3年半前に設立したのですが、総工費は約8千万円で借金もしました。器具や光熱費、維持費などもかかるので、いまは給料も出ないような状態ですが、“ボールを見るな!”“ダフれ!”“手打ちしろ!”など、一発で変わるプログラムとアカデミックな雰囲気が好評です。
 レッスンは土日、祭日が主で平日は夜が多い。その他の日は雑誌の撮影などに利用してもらうなど、効率よく使う努力もしています。ボランティアで介護事業のデイサービスを行うことも計画中です。地元に根付いたスポーツ施設にしていくのが夢です。
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